徐粒

紅衛兵運動のおかげで、 全国の小中学校、 高校、 大学では、 たちまち授業が完全に取りやめになり混乱状態に陥った。 先生達はひどい批判や迫害を受けた。 また、 非革命的であるとして伝統や文化的なもののほとんどすべては破壊あるいは禁止された。 図書館もすべて封鎖され、ほとんどの書籍は読むこと自体が禁止された。 全国で下放した知識青年は約1623万人といわれている。 文革が始まったとき、 私は小学校4年生で、ちょうど本を読むことの楽しさを覚え始め、 本が読みたくてたまらない時期であった。 しかし、学校での授業もなくなり、 公に読める本は全くなかった。 本を隠して持っている人もいたが、 信頼できる仲間でないと危なくて貸し借りできない状況であった。 父が教員で母が医者であったため、 家の中には本が沢山あった。 しかし父は知識人として批判の対象とされ、 自宅に押し掛けてきた紅衛兵により本を含め価値のありそうなものが何もかもほとんど持ちさられた。 母の数冊の医学本が残ったのは救いであった。 小学生の私には意味は分からなかったが、 それらの本を何回も何回も読んでいた。 内容はともかく、 活字が書いてありさえすればよいのであった。 運よく、 ぼろぼろの 「連環画」 や小説を仲間から借りることができたときには、 それこそ何もかも忘れてその本に没頭していた。そのとき感じた束の間の至福の気分は、 今になって考えてみれば、 社会が悲劇的な状況におかれていたことの裏返しであった。